後代検定体型調査では、調査対象の初産雌牛(後代検定対象娘牛とその同期牛)において、酪農家から聞き取りする方法で気質と搾乳性の調査を実施していましたが、2012年後期の体型調査から、それらのスコア区分が変更になりました。
従来の気質の評価では「温和」、「神経質」および「粗暴」の3段階から酪農家が選択することになっていましたが、これでは「温和」と「神経質」の間に存在する「普通(または平均的)」という状態を選択できないとの酪農家からの指摘を受けたことが変更の発端になりました。酪農家や技術者から「神経質」と「粗暴」の違いについて、説明を求められる場合があっても、明確に回答することができませんでした。また、気質には「普通」が存在しないのに、遺伝評価では中間の100が「普通」と表示されているため、スコアと遺伝評価値の表示に矛盾がありました。
一方、海外における気質のデータ収集では、1から5または1から9の範囲で、線形形質として扱う場合が多く見受けられます。カナダにおける気質データは、表-1に示したとおり、5段階に分けて、気質の程度が連続して変化するようにスコア化されています。我が国の気質におけるデータ分布は、「温和」:84.91%、「神経質」:14.17%および「粗暴」:0.92%であり、「温和」の出現頻度が極めて高い傾向にあります。カナダにおける気質の「平均的」、「温和」および「極めて温和」の3スコアの合計頻度は88.76%です。それに対して、日本における「温和」には84.91%のデータが分類されていますが、カナダのスコアから類推すると、これには「温和」そのもののみならず、「普通」が存在したならば分類されるであろう個体のほとんども「温和」に分類されている可能性が高いと考えられます。「粗暴」の出現頻度は、カナダの「極めて神経質」の1.45%と比較し、出現頻度が少なく0.92%にすぎませんでした。「粗暴」は、「神経質」との違いが明確でないことも、出現頻度が低い理由の一つかもしれません。
もし、カナダのように気質データを線形形質として収集できるならば、線形式体型形質と同様に気質を連続変数として扱うことができるので、遺伝評価が容易になります。9段階のスコアで気質を評価している国もありますが、気質の程度はあくまでも感覚的に酪農家自信の牛群内で比較していること、さらに聞き取り調査を基本としていることから、複雑なことを避ける意味で5段階スコアくらいが望ましいと考えられました。
以上の理由から、気質の聞き取り調査は、2012年後期(9月26日以降)の体型調査以降、5段階のスコアで実施することに変更されました。また、搾乳性は、気質の調査と同時に、「早い」、「普通」および「遅い」の3段階で調査が行われていましたが、この形質についても5段階スコアに変更することになりました。気質と搾乳性の新スコアは、表-2のとおりであり、カナダにおいて採用されているスコアを参考にしています。
平成24年7月19日 掲載