交配相談システムは、両親の育種価平均、近交退化量および優性遺伝効果の3種類の遺伝効果を利用して供用種雄牛を推奨します。これらの中で優性遺伝効果は、理解が難しいところがあるので、優性遺伝効果をわかり易く解説するためのホームページを開設し、同時に交配相談システムの普及推進を図っていきたいと考えています。
(1)優性遺伝効果とは、父牛と母牛のそれぞれの家系の組合せによって発揮される効果のことであり、相性の効果とも呼ばれています。
(2)育種価は相加的遺伝効果の推定値であり、これは子孫に伝達されていく効果ですが、優性遺伝効果は1代限りであり、次の世代には伝達されない効果です。
(3)「ホルスタイン登録牛交配相談」システムにおいて、最適な供用種雄牛を推奨する場合には、両親の育種価平均、近交退化量および優性遺伝効果が利用されます。
(4)優性遺伝効果の考え方
相加的遺伝効果は、加算的に効果が現れます。aとA は、同じ遺伝子座に存在する対立遺伝子とし、a = 1、A = 2と仮定した場合、相加的遺伝効果の加算的というのは、aa < Aa < AA ⇒ 2 < 3 < 4 という関係が成立することをいいます。
泌乳能力のような経済形質に関与する遺伝子は、多数の遺伝子座の遺伝子によって支配されていますが、これらの遺伝子座の数は数百または数千あるのか実際のところわかっていません。
各遺伝子座には、対立遺伝子が存在し、対立遺伝子間には相加的な遺伝子の関係が存在すると考えられています。対立遺伝子は、それぞれ小さな遺伝子効果しか持っていません。これら対立遺伝子の集まりをポリジーン系と呼び、ポリジーン系の相加的遺伝子の効果を合計したものが遺伝的能力として発現することになり、育種価と言う数値で表示されます。
優性遺伝効果が存在すると、Aa(ヘテロの組合せ)の時に+Dが作用して偏りを生じます(優性偏差)。+Dには、3種類の作用が知られています。
[1]完全優性
+D = 1の場合を仮定します。
AA と Aa + Dは同値の関係
[2]超優性
+D = 1.5の場合を仮定します(1 < +D )。
適応度・例)鎌状赤血球貧血
[3]部分優性(不完全優性)
+D = 0.5の場合を仮定します(0 < +D < 1)。
優性遺伝効果を最大に利用したいと思うならば、優性遺伝効果が存在する遺伝子座の遺伝子の組合せがヘテロになる遺伝子座を増やすような両親の組合せを行えば良いことになります。
一部の酪農家は、相性の良い組合せ、すなわち優性遺伝効果を最大にするような組合せを経験的な情報をもとに判断しているかもしれませんが、科学的な情報を使えばもっと確実に相性の良い組合せを見つけ出すことができます。
交配相談システムは、科学的な情報を利用することで、優性遺伝効果が最大に発揮できる交配組合せを探し出します。
(5)ある雌牛に対して供用種雄牛を選ぶ場合、雌牛の父牛との相性の良い供用種雄牛(PDF形式20KB)を示しました。総合指数の優性遺伝効果の順にリストしています。