日本ホルスタイン登録協会は、7月1日より新SNPチップ(XTチップ)によるSNP検査の申込みを受付しました。 このチップはこれまでのLDチップと同価格で、従来の50Kチップとほぼ同等量の遺伝情報を検査できます。



50Kチップに準じる情報量を確保


 SNP検査は2013(平成25)年に開始して以来、米イルミナ社の50K(中密度)チップとLD(低密度)チップの二種類を使用していましたが、 先頃 遺伝子型検査を委託している家畜改良事業団遺伝検査部(群馬県前橋市)はSNP検査用チップを家畜改良事業団と米国イルミナ社が共同開発した独自のカスタムチップであるXTチップ(LIAJ custom_50v1)という新チップに一本化しました。
 XTチップは従来の50Kチップとほぼ同等量の遺伝情報(50,748SNP)を検査することができます。 現在、ホルスタインのゲノミック評価には42,275SNPを利用していますが、XTチップには50Kチップと同様にそのすべてのSNPが搭載されています。 今まで主に雌子牛の検査に利用してきたLDv2.0チップは約7,900SNPを検査していますが、その中にはゲノミック評価に必要だがLDでは直接測定できないSNPがあります。
 このようなSNPはインピュテーション(補完)という統計処理によって測定していないSNPを推測し、ゲノミック評価に利用できるようにしていました。 この方法では両親や血縁関係にある個体のSNP情報が補完の精度を左右することから、自動登録同時SNP検査のように全牛SNP検査を実施している酪農家の子牛はSNPの補完精度が高くなります。 今回のXTチップの採用により、ゲノミック評価に使用するSNP情報は基本的に補完を行わなくてもよいので、 全牛のSNP検査を実施していない牛群の個体でもSNP情報の精度に違いはなくなります。


現在と7月以降のSNP検査




SNPを利用した将来の親子判定にも対応


 また、XTチップにはICAR(家畜の能力検定に関する国際委員会)が牛の血統確認のために開発した626SNPと幾つかの遺伝性疾患遺伝子を見つけるためのSNPも搭載されています。 国内における親子判定は現在でもマイクロサテライト(MS)法が主流ですが、海外ではすでにSNPを利用した親子判定が行われています。 ゲノミック評価の普及によって多くの乳牛がSNP検査を行えば、SNPを利用した親子判定が可能になります。 ただし、父母子の判定の場合、子がSNPを持っていても父や母のSNP検査も必要ですから、親子判定専用の安価なSNPチップが実用化されるまで、MS法の方が安い価格で親子判定ができるでしょう。
 さらに、XTチップにはHD(高密度)チップに高精度で補完するために必要な4,017SNPが含まれています。 HDチップは約77.7万SNP以上を検査できるチップであり、牛ゲノムのほぼ全域を網羅しているので幅広く遺伝解析等の研究に応用できます。 ただし、ゲノミック評価にはそこまで多くのSNP情報を利用する必要はなく、さらに検査料が高価なため多くの乳牛を対象にHDチップを普及させることは経済的ではありません。 そのため、XTチップから高精度にHDに補完できれば乳牛改良の基礎研究に利用することができるため、このような補完用のSNPが搭載されています。


XTチップ




50Kの情報量をLDチップと同額で検査


 XTチップは従来の50Kチップと同等量の遺伝情報をLDチップと同価格で検査することができます。 雌子牛は今までLDチップでSNP検査をするのが一般的でしたが、7月からは検査料を据え置きにしながら、50K相当のSNP情報が直接得られ、ゲノミック評価に利用されます。 自動登録同時SNP検査の対象となっている雌子牛については、6月22日以降の登録証明分からXTチップの検査に対応した試料送付書を登録取扱団体に送付しています。
 また、雄子牛については50Kより検査料が安くなるので、今後はさらにSNP検査が普及することを期待しています。 なお、SNP検査の試料は、今までと変更なく、尾房の毛根を80本程度送付する必要があります。
 これを機にSNP検査を受けてゲノミック評価情報を得て、その情報を基に、乳牛資源を有効利用するための交配計画や更新牛選定に利用してください。



北海道ホルスタイン農業協同組合


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