宇都宮顕彰会
2007-2

平成18年度 第39回 宇都宮賞表彰者決定
 表彰式:平成19年3月1日(木)
     14時00分
 会 場:札幌パークホテル


酪農指導の部
井上錦次様(江別市)
乳牛改良の部
栗城一憲様(豊富町)
乳牛改良の部
小華和秀則様(安平町)

 宇都宮仙太郎翁顕彰会(理事長;黒澤信次郎)では、かねてから選考中の本年度表彰者について、1月15日(月)に理事会・評議員会を開催し、酪農指導の部1名、乳牛改良の部2名を決定いたしました。

 
 井上錦次様は、昭和2年に北檜山町の農家の六男として生まれ、
 昭和24年酪農学園短期大学の前身である酪農学園大学部の創期生として学び、黒澤酉蔵様の健土健民、三愛(愛神・愛人・愛土)精神に深い感銘を受けた。
 昭和26年同短大卒業と同時に短大助手を皮切りに酪農学園機農高校教諭、同大学助教授、同付属農場長等を歴任し、50年以上の長きに亘り一貫して実学教育・酪農後継者の育成、地域酪農発展に尽力された。
 この間、昭和34年には、これからの農業はアメリカ・デンマークに学ぶ必要性を感じ、2年の間留学実習を経験した。特に、留学で得た「農業教育は実学中心であるべき」を実践するにあたり、高校生、大学生に体験学習をさせるために多くの関係機関の協力を得て、また、酪農家の理解も得て委託実習制度を確立した。これが、今日広く各農業系大学において行われている実習の先駆的役割を果たしたことは高く評価される。
 以上の様に、酪農に対する多面的な教育活動、啓発的な提言と実践そして実学教育への貢献は先駆的であり、農業後継者育成・教育への貢献と功績は多大なものがあります。

 
栗城一憲様は、昭和45年名寄農業高等学校を卒業し、昭和48年以降の大型機械・バルククーラーが導入される中、良質な粗飼料確保のため草地基盤整備の充実に積極的に取組み、乳牛頭数の拡大と共に個体はもちろんのこと牛群全体の改良を主体に取組み始めた。
 氏は、血統登録をはじめ牛群検定・牛群審査には制度開始当初から積極的に取組むとともに、「それら乳牛改良の材料は、乳牛の出すサインとして捉え、その情報を活用することが大事である」との認識を持ち、交配の基礎資料として利用し、特に、乳用牛の特質・乳器・肢蹄を重視し、選抜・淘汰を繰り返した。その反面、初産から無理して搾ることはせず、生涯生産性の向上のために長命・連産性に富んだ牛群の作出に努力されている。
 その成果は、牛群検定成績乳量10,711㌔、乳脂率4.05%、乳蛋白率3.26%、平均体型得点で86.5点に示されるように体型・能力のバランスの良さは北海道屈指であり、遺伝的改良情報でも、全国で公表される雌牛NTPのトップ10%以内に、牛群の27%にあたる13頭が入るなど、改良集団のトップクラスに位置づけられる。
 さらに、共進会においても、5年に1回開催の全日本共進会において、北海道代表牛として母娘2代に亘り出品し、それぞれ優等賞の輝かしい成績を納めている。
 氏の培った乳牛改良の実践や体験は、地域はもとより全道の酪農家及び関係機関への助言・提言等の指導者として多大なる貢献をされております。

 
小華和秀則様は、昭和30年9月福島県浪江町の酪農家(旧姓渡部家の次男)に生まれ、昭和53年神奈川大学を卒業後、同年9月安平町の牧場にて2年余り実習し、その後アメリカにて1年9ヵ月実習、「乳牛改良としての系統の重要性」を学び、その意識を強く持ち続けている。帰国後、昭和58年、結婚と同時に小華和牧場の経営に参画し、翌年3月に経営を継承した。
 当牧場の牛群はチュンキーの系統による繁殖率が94%となっている。他にも数系統飼養したものの、丈夫で高能力かつ繁殖が良く高確率で雌を産むこの一族が現在までに実に延べ500頭以上の子孫娘牛を輩出し、現在の牛群改良に反映されている。
 過去から連綿と継承された血統とともに、牛群審査や牛群検定事業に積極的かつ継続的に参画し、長命・連産性に富み、泌乳能力を高める経済性の高い牛群改良を目指し努力されており、その成果は、牛群検定成績において平成8年から昨年まで10年連続1万㌔以上であり、さらに平成16年14,466㌔、平成17年14,629㌔で、2年連続全道1位という偉業を達成されている。
 地元安平町において遠浅酪農組合の組合長・JAとまこまい広域酪農振興協議会長を歴任し、現在、北海道酪農協会胆振東部支部の理事として管内酪農の酪農諸政策の提言、乳質改善、乳牛改良等意思結集のまとめ役として貢献されております。

 表彰式は、3月1日(木)札幌パークホテルで開催されますので、顕彰会会員多数のご出席をお待ちしております。
 本年度の組合員カナダ酪農視察は11月8日から14日まで5泊7日の日程でデーリィマン社との共同企画で実施されました。組合員を含む総勢24名の参加者と共にカナダの著名牧場とローヤル・アグリカルチュアル・ウインター・フェアを視察研修し、短期間ではありましたが先進地の酪農を直接肌で感じ取り、大きな成果を得て帰国しましたので概況を報告いたします。

【日本出国からカナダ到着まで】

 11月8日10時30分、新千歳空港団体待合室において道内参加者10名が集合し、結団式では、当組合の桑元専務とデーリィマン社の佐藤取締役から激励の挨拶をいただき、団長には、共催の理事として参加させていただいた私(別海町 山田光男)に指名があり、11時40分定刻、新千歳空港を出発しました。
 関西空港では本州の参加者11名と標茶高校からの参加者3名が合流し、18時にカナダ・バンクーバーへ向け約10時間のフライトとなりました。睡魔に襲われながら、現地時間10時20分バンクーバーに着陸。12時発のトロント行きに乗り換え、約4時間30分後カナダ最大の空港であるトロント空港に無事到着しましたが、同行者2名の手荷物が無く、次の便で到着するというアクシデントがあり、空港で約1時間待たされました。
 空港には、本ツアー専任とも言える現地ガイドのテリー・鈴木氏の出迎えを受け、宿泊先のナイアガラへバスで1時間30分掛けて移動し、22時30分ホテルに到着しました。

【牧場視察】

〔サミットホルム牧場〕

土地面積:320ha(130ha:乾草・150ha:コーンサイレージ)
購入飼料:25%
飼養頭数:総頭数650頭、搾乳頭数300頭   (平均産次3.3産)
飼養形態:5群のフリーストール         (TMRで3回給与)
搾乳形態:16頭ダブルのミルキングパーラー (3回搾乳)
牛群能力:M:12,800㎏ F:3.9% P:3.35%  (初産平均:11,000㎏以上)
体型審査:EX・2頭 VG・85頭
労 働 力:5人                   (兄弟と兄の息子・パート)
供用種雄牛:トイストーリー・ローマックス・バックアイ (85%カナダ・15%アメリカ LPIの上位を使用)

 1939年にチェコスロバキアより移民し、1947年に酪農を開始する。能力・体型の両方を追求した経営は成功しないとの考えから、能力指向型(1.能力2.長命性)で経営している。収入の95%が生乳で残り5%が個体販売(廃用牛・ヌレ子)であり、乳価は1㌔70円で1年間を通して変動しないこととなっている。廃用牛は1㌔50円・ヌレ子18,000円で取引されている。ストールの牛床に敷料として砂を使用しており、肢蹄への負担を軽減しストレスを解消した事が乳房炎の大幅な減少につながり、乳質も向上しているとのこと。当牧場には、生涯乳量10万㌔以上が10頭と14万㌔以上が2頭牛群に存在し活躍している。牛群能力12,800㎏と高能力を誇り2002年にマスターブリーダー(その年に最も酪農界に貢献した酪農家であることの称号)に選奨されている。

〔デュパスケア牧場〕
土地面積:360ha (120ha:乾草・120ha:販売用コーン・120ha:販売用大豆)
購入飼料:15%
飼養頭数:総頭数150頭、搾乳頭数60頭
牛群能力:M:11,900㎏ F:3.6% P:3.3%
体型審査:EX・30頭 VG・45頭 GP・10頭
労 働 力:3人
供用種雄牛:ダンディー・ロイ、その他はファウンデーションサイアー
肉用鶏(ブロイラー):7万羽飼育

 スイスで牧場経営をしていたが、1983年に移民し1984年にアレングローブ牧場を買い取り、牛群改良によりカナダ・アメリカにおいて共進会のトップに君臨(7年連続エキスポ プレミアブリーダー獲得、6年連続ローヤル プレミアブリーダー獲得)していた。
デュパスケア牧場の牧場主を囲んで
牛舎に入ったとたん、素晴らしい牛たちが多く、特に後乳房の幅、付着の高さに圧倒され、まさにハイレベルな牛群でした。牛舎内は照明が非常に明るく、通路にはシェービングが敷きつめられ清潔感があり、いつ見学者が来てもベストな状態で牛を見せることを意識しており、自らが設立したファウンデーションサイアーで、日本でも売り出し中のデュパスケア・カリスマの娘牛が多く繋がれていました。

〔マウントエルジン牧場〕

土地面積:120ha
飼養頭数:300頭(搾乳牛80頭)
血統登録:150頭 無登録:150頭
牛群能力:牛群の入れ替えが激しいため正しい数値は分からないがM:38㎏(日平均) F:4.1% P:3.3%
体型審査:EX・8頭 VG・50頭 GP・22頭
労 働 力:3人
供用種雄牛:ゴールドウイン・ボルトン・トイストーリー(採卵用)、ロイ・ファイナルカット

 2003年から若い酪農家がシンジケートを組んで牧場経営をしている。牛群は100%購入牛で、各地のショウで活躍しているショウカウを購入してはまた、転売して収入を得ている。収入は50%が個体販売で残り50%が生乳である。カナダでは、生乳の出荷枠が非常に高額で取引されているが、この牧場はロンドンディリーファーム(800頭搾乳)が母体となって牛乳の出荷枠を確保している。
 今回のローヤル・ウインター・フェアには6頭出品している。

〔クオリティ牧場〕

飼養頭数:160頭(搾乳牛:80頭)
牛群能力:10,000㎏
体型審査:EX・30頭 VG・60頭 GP・2頭
労 働 力:6~7人
供用種雄牛:ダンディー・セプテンバー・スカイフェーム、フランティスコの息子(父:アウトサイド・ギブソン)

 ローヤル・ウインター・フェアに出品(育成牛1頭・経産牛9頭)しているため牧場のオーナーは不在で話を聞くことはできなかった。当牧場は2004年・2005年にローヤル・ウインター・フェアのグランドチャンピオンを獲得している。この牧場に到着したのは夕方5時を過ぎていたため搾乳中であった。経産牛の主な種雄牛はチャールズ・ギブソンが多く、次いでラデュックが多かった。また、クオリティ牧場で生産された種雄牛で、日本にも娘牛がいるクオリティ・スカイ・フェームの初産牛が多く繋がれていた。

【ローヤル・ウインター・フェア 1日目】
 9時にホテルを出発し、トロント市内を視察(市庁舎・州議事堂・トロント大学・CNタワー)し、ローヤル・ウインター・フェアの会場に移動した。
 11時30分にローヤルの会場に到着したが、会場は共進会場と思えない程の立派な建物で、会場入口は空港のロビーのような広さであった。
 12時30分よりローヤル・ウインター・フェアの未経産クラスが開始された。審査員は、昨年の十勝総合共進会の審査をした、ウイスコンシン州の酪農家であるマイク・デーバー氏が、また、アソシエート審査員は、今年の根室B&Wショウの審査をした、シーメックスアライアンスのブライアン・カースカデン氏が担当した。
 目の当たりにする出品牛は、未経産牛では抜群の発育と体高に応じた体長と深さ、鋭角性を持っており、月齢が進むにつれて前駆が強く、肋の開張した牛が多く出品されていた。審査は少し遅れたが順調に進行し、未経産クラスの全審査が終了した。                                 
【セール・オブ・スター】
 今年で54回を誇るこのセールには、多くの購買客・観客が集まり会場全体が熱気に包まれていました。グランドボーイの4人がセリ場のリング内に上がり掛け声と共に電光掲示板の値段が上がっていき最終的には最後の1人になるまで価格が競り上げられていました。リングの上にはセール牛はもとより、母牛、姉妹牛なども上げて、セリ最中に何度もコマーシャルを入れて購買意欲を高めており、セール平均価格は昨年を上回りました。
 上場頭数  63頭
 平均価格  2,075,333円
セリ会場に展示されたコマーシャル牛(右側)
【ローヤル・ウインター・フェア 2日目】
 ホルスタインの2日目は早朝7時15分に当歳泌乳クラスから審査が開始された。2歳クラスから体高、体長、鋭角性に富んでおり、年齢が進むにつれてより乳用性に富みフレームがより一層充実していました。乳器においては形状と付着の強さ、特に後乳房の高さ幅と乳房底面の高さに優れたものが多く圧倒されました。
 出品牛全てが良く調教されており牛の美しさ、歩様の良さを充分に審査員にアピールするリードマンにはレベルの違いを痛感しました。また、リングマスターの指示に従ってスムーズな進行に協力しようとする姿勢には好感が持てました。女性のリードマンが多いのも印象的でした。
 出品牛337頭の頂点、グランドチャンピオンには5歳クラス1位のスルーレーン・ジエームズ・ローズ(父:ジエームズ)が選出され、リザーブグランドチャンピオンには6歳以上成牛クラス1位のベロー・ストーム・クリスタルが選ばれました。3連覇のかかったクオリティ・B C・フランテイスコは前年から分娩しておらず6歳以上成牛クラスの3位に終わったが、165㎝を超える雄大なスケールには魅了させられました。
 出品牛を種雄牛別に見ると未経産牛はダンデイー、アストロノミカルの娘が多く、上位に入賞していました。未経産牛のプレミアサイアーはダンデイーになりました。経産牛はギブソン、ラデユツクの娘牛が多く、中でもラデユツクはジュニア3歳クラスと4歳クラスで1位を獲得し、経産牛のプレミアサイアーに輝きました。
 北海道ホルスタイン協会賞は、プレミアエキジビターを獲得したペリー ボーレット氏に、協会を代表して特製盾を贈呈いたしました。
グランドチャンピオン牛 同行した職員2名と一緒に特製楯を贈呈

・シュープリームチャンピオン(全品種)
・グランドチャンピオン
・シニアチャンピオン

   スルーレーン ジエームス ローズ
     (父:ジエームズ)

・リザーブグランドチャンピオン
・リザーブシニアチャンピオン
   ベロー ストーム クリスタル
     (父:ストーム)

・インターミディエイトチャンピオン
・準々グランドチャンピオン

   コンフイールド リステリン リスター
     (父:リスター)

・リザーブインターミディエイトチャンピオン
   トマリン レデユツク デラ
     (父:ラデユツク)

・ジュニアチャンピオン
   バレービル エルヒーローズ ジユリエツト
     (父:エルヒーローズ)

・リザーブジュニアチャンピオン
   ポンドセツジ アストロノミカル ジエイド
     (父:アストロノミカル)

◎プレミアブリーダー
   :ベルホンテェイン ホルスタイン

◎プレミアエキジビター
   :ペリー ボーレット氏
   【北海道ホルスタイン協会賞を贈呈】

【おわりに】
 出品牛は、未経産からサイズに富んでおりそれ以上に体全体の充実度と、特に若齢クラスの発育と前駆の強さ肋張りにはびっくりさせられました。経産牛については、特に当才泌乳クラスと2才クラスの体の充実度と後乳房の幅には、日本との差を大きく感じました。3才以上のクラスでも牛のスケールから乳房・中央靭帯の強さなどとても素晴らしい牛たちが多く、カナダの層の厚さや長年の改良の重みを感じさせられました。
 また、ショウリングでは牛の調教が良くリードマンと一体化し、トップモデルを思わせる歩様の素晴らしさで、見ていてとても気持ちが良いものでした。
 短期間での牧場及びショウ視察ではありましたが、カナダ酪農の歴史の深さを感じる事が出来たと同時にフェア会場のスケールの大きさや素晴らしさは、カナダの国を上げてのイベントであると強く印象付けられました。また、視察した牧場については、牛群の素晴らしさ、牛舎や牧場周辺の環境の整備など海外に優良資源を売り込もうとする姿勢が強く感じさせられました。
 今後この北海道でも、この様な素晴らしいショウが開催できるように、今回の研修で得た様々な知識・成果を時々の立場で発揮していきたいと、考えを新たにした次第であります。
 最後に参加者各位のご協力のおかげで無事研修が終了できましたことに、感謝申し上げ報告といたします。
(理事:山田光男 職員:渡邊、田村)
  
生産寿命と繁殖性の向上を目的に
体型審査標準を改正 (今月4月から実施予定)
 日本ホルスタイン登録協会(以下、日ホ)では、昨年11月に登録審議会(木下良智委員長・独立行政法人家畜改良センター理事長)を開催し、ホルスタイン種雌雄牛審査標準の改正案について諮問した。審議の結果、「雌雄ともに、体積の独立した区分を廃止し、雌は現行の5区分から4区分に、雄は4区分から3区分に変更して、評点および説明を一部改める事は適当」との答申があり、これを受けて同月に開催した日ホ理事会において承認された。施行期日は関係機関と調整の上、今年4月からを予定している。

Ⅰ.今日までの改良成果と問題点
 近年、我が国ホルスタイン種の産乳能力は、急速に遺伝的改良が進んだ事により、酪農先進諸外国に比肩する水準に達している。乳量の育種価において年当たり約110㎏の速度で改良されており、その結果、2005年における305日検定乳量は9,121㎏で、牛群検定事業が開始された30年前の1975年の5,826㎏と比較して、約1.6倍増加した。(図-1)
 一方、ここ30年間におけるホルスタイン種の空胎日数、分娩間隔および授精回数は増加傾向にあり、明らかに繁殖能力の低下が見られる。1976年頃の分娩間隔は400日程度であったものが、1990年代後半から分娩間隔の急速な延長傾向が見られ、約30年後の2004年には433日となっており、実に1カ月以上延びている。(図-2)
 このような状況下で、我が国のホルスタイン種における体型と繁殖を関連付ける研究は、今後の課題であるが、体型と生産寿命の関係では、多くの研究成果の中で、必ずしも優美と言われるような体型が、機能的体型とは言えない事が明らかになって来た。それは「より鋭角的で、過度の体積を持つ牛」は淘汰の危険性が高くなり、生産寿命の短縮化を招く傾向が認められるというものである。しかし、乳房および肢蹄に関係する形質において、望ましいとされる形状は、生産寿命の延長が期待出来た。

図-1 ホルスタインにおける305日平均乳量の年次推移
(社)家畜改良事業団、乳用牛群能力検定成績速報平成17年度
    
   
    
図-2 我が国の能力検定農家における平均分娩間隔の年次推移
(社)家畜改良事業団、乳用牛群能力検定成績とりまとめ平成16年度

Ⅱ.審査標準改正に対する
 WHFFの勧告
 今日の乳牛改良は、遺伝資源の世界的流通拡大と、インターブルによる種雄牛の国際間評価など、改良の手法も国際的な協調や統一の方向で進められている。世界主要国の登録団体等が加盟する世界ホルスタインフリージアン連盟(WHFF)では、国際的に生産寿命と繁殖性が低下している現状を踏まえ、体型審査の重要な目的である長命連産性の向上を図るため、加盟国に対して雌牛の審査標準を4区分とし、今まで以上に生涯生産性に直結する部位の配点を見直すよう勧告している。

(1)2003年4月に、カナダのモントリオールでWHFFの第6回世界審査委員ワークショップが開催され、以下の事項について勧告があった。
 ① 加盟各国で体型の改良目標が異なるため、決定得点を構成する各体型区分の重みを統一する事は簡単ではないが、WHFFは、決定得点の国際遺伝評価値の相関を向上させるために、可能な限り国際調整を行う。
 ② 決定得点は、以下の基本4区分を使用する。
  イ)乳房
  ロ)肢蹄
  ハ)骨格と体積
  ニ)乳用牛の特質
 ③ 乳房の重み配分は40%とし、その他の体型区分の重み配分は各国の裁量とする。

(2)2004年3月に、フランスのパリで開催されたWHFF定期総会において、上記の勧告が承認された。

(3)2005年9月に、オランダのナーデンで第7回世界審査委員ワークショップが開催され、第6回の同ワークショップで策定した基本4区分の名称を正式決定し、各国の登録協会に勧告した。
  イ)乳房
  ロ)肢蹄
  ハ)骨格 [尻を含む] ←(骨格と体積)
  ニ)乳用強健性    ←(乳用牛の特質)

(4)以上のような体型の遺伝改良を取り巻く状況の中、各国の登録協会は、WHFFの勧告に基づき、それぞれ体型審査標準の改正を実施した。しかしながら、どの国においても審査標準のみの改正であり、体型改良の到達目標であるツルータイプ(理想体型)の改正までには至っていない。これは、審査標準中の体型部位の重み配分を改正することで、ツルータイプに到達するまでの各体型部位の改良速度を調整している。
 ① 乳房と肢蹄は、改良速度を速めるために直接選抜圧が加わるよう、現状またはそれよりも重み配分を大きくしている。
 ② 乳用強健性(乳用牛の特質)は、改良速度を鈍化させるため重み配分を少なくするとともに、体積は減率配分して他の体型区分に包含することにより、直接選抜が出来ないよう調整を図っている。


Ⅲ.日本での主な改正点
(ホルスタイン種雌牛)
(1)WHFFの勧告に従って体型部位の区分は現行の5区分から、「体貌と骨格」、「肢蹄」、「乳用強健性」、および「乳器」の4区分とする。(図-3)

(2)現行の「体積」は減率して「体貌と骨格」に包含する。

(3)「体貌と骨格」について、体貌は体の姿形を、骨格は骨格構造を意味する。これまでの「外貌」とは内容がやや異なるため名称を変更した。

(4)「体貌と骨格」では品種の大きさとそれに合った体躯の充実、体各部の移行とつりあい、骨格構造の正確さや強さ、尻の構造を見る。

(5)「体貌と骨格」の配点を25点とする。内訳は頭2点、肩・背・腰を4→7点、現行の「体積」由来の胸・肋腹を6点、繁殖上で重要な尻を8→10点にする。

(6)「肢蹄」は長命性に関連深い形質であり、配点を15→20点とする。

(7)「肢蹄」の内訳は、肢を9→10点、蹄を6→10点とする。近年、海外の主要国ではフリーストール・バーンに対応して、歩様や蹄を重視する傾向が強くなって来た。日本でも、フリーストール牛舎等の増加に伴って飼養環境の多様化が進んでいることから、四肢の強さや、特に後肢の形状を見るとともに、蹄(形状や質)をより重視した配点とする。

(8)「乳用強健性」は、従来から鋭角性のみならず強さを考慮した評価が行われており、これを強調するために「乳用牛の特質」の名称を変更した。しかしながら、「乳用強健性」は体積と同様、年当たりの遺伝的改良量が高い反面、高泌乳を伴うリスクが大きく、生産寿命を短縮する危険性を持ち合わせている。そのため、繁殖性や生産寿命に関連深い「体貌と骨格」や「肢蹄」の改良を優先することとし、配点を20→15点に下げる。

(9)「乳器」は、機能的体型として最も重要な部位であることから、従来と同様に40点の配点とする。また、生産寿命との関係が認められる前乳房を6→7点とし、後乳房を9→8点に変更する。
図-3 ホルスタイン種雌牛審査標準の新旧配点比較

ホルスタイン種雌牛審査標準 (案)
区 分 評点 説              明
体貌と骨格  品種としての適度な大きさと強さをもち、雌牛らしく、姿勢は優美で、各部のつりあいがよく生き生きとして品位に富み、性質が温順なもの
25
(2)  長さは中等で、輪郭の鮮明なもの                                    
 額は広く適度にくぼみ、鼻梁はまっすぐで、眼は生き生きとして大きく、まぶたは薄く、温和で、耳は中等の大きさで形と質がよく、機敏に動き、鼻鏡は広く、鼻孔は大きく、下顎は強く、鮮明なもの
肩・背・腰 (7)  長さは中等で、付着がよく、胸及びき甲への移行がなめらかで、肩後はよく充実し、中躯との結合のよいもの
 強く、まっすぐで長く、棘突起がよく現れるもの
 横突起はよく発達し、広く、長く、ほとんど平らで強いもの
胸・肋腹 (6)  深く、胸底は広く、腋の充実しているもの
肋  腹  深く、強く支えられ、腹は後方へ深く、広くなっているもの
(10)  腰角から坐骨にかけて適度に傾斜し、長く広く充実したもの
腰  角  広く、背腰とほとんど水平で、粗大でなく適度に現れるもの
 幅広く、腰角と坐骨端からほぼ等距離で、適度の高さに位置するもの
坐  骨  坐骨間が広く、腰角よりやや低く、輪郭鮮明で、臀は平らで広いもの
尾  根  坐骨間のやや上部に形よく位置し、上縁はほとんど水平なもの
 長く、次第に細く、尾房はつりあいがよく、豊かなもの
陰  門  ほぼ垂直に位置するもの
肢  蹄  肢の長さは体の深さとつりあい、肢勢は正しく、広く立ち、輪郭鮮明で強く、歩様は確実なもの
20
(10) 前  肢  まっすぐなもの
後肢の踏み  寛から下ろした垂線が蹄の中間にあり、後望して肢間が広く、ほぼまっすぐなもの
飛節・管  飛節は鮮明で、適度な角度と幅があり、管は平たくよくしまり腱は明らかに現れるもの
 中等の長さで、強く、弾力があるもの
(10) 角   度  適度の角度を持ち、蹄底が平らなもの
大 き さ  形よく幅があり、蹄踵はほどよい厚さで趾間のしまりのよいもの
 光沢があり緻密なもの
蹄 冠 部  よくしまり鮮明なもの
乳用強健性  体全体に活力があり、乳用牛としての強さを示し、泌乳の時期に応じて適度の肉付きと飼料の高い利用性を現すもの
15
頸・き甲・肋・膁・腿 (12)  長く、薄めで、肩と胸へなめらかに移行し、咽喉、胸垂の輪郭が鮮明なもの
き  甲  鮮明で、肩甲骨の上縁とそれよりやや高めの棘突起がほどよいくさび形となるもの
 肋骨間が広く、肋骨は幅広く、平たく、長いもの前肋はよく張り、後肋は斜め後方によく開張したもの
 深く、鮮明なもの
 外側は平たく、適度に充実し、後望して股間が広く、内側に軽く湾曲し、よく切れ上がっているもの
皮膚・被毛 (3) 皮  膚  ゆとりと弾力があり、薄めなもの
被  毛  細密で光沢のあるもの
乳  器  乳房の付着が強く、よく発達し、四乳区がつりあい、質がよく、長年にわたり高い生産能力を現すもの
40
前 乳 房 (7)  腹壁に強く付着し、長さは中等で、適度の容積があるもの
後 乳 房 (8)  高く、広く、強く付着し、上方から下方にかけて一定の幅をもちわずかに丸みを帯びているもの
乳房の懸垂 (5)  乳房を左右に二等分する間溝が明瞭に現れ、靱帯の強いもの
乳房の深さ (9)  底面が水平で、飛節端よりやや高いもの
乳房 の 質 (3)  柔軟で、弾力に富み、搾乳直後はよく収縮するもの
乳   頭 (8)  太さと長さが適度で、よく揃い、円筒形で、各乳区の中央に配列し、垂下しているもの
合計 100

  平成19年度の審査日程決まる
 平成19年度の牛群審査、および乳用種雄牛の後代検定対象娘牛と、その同期牛の体型調査を下表に基づいて実施いたします。これまで十勝管内は4班に区分して巡回しておりましたが、その中でも地域によって日数に偏りがあるため、一部班の組み替えを行い、5班編成といたしましたのでご承知置き下さい。牛群審査につきましては、最寄りの登録取扱団体にお申込み下さい。
年4回実施
地 区 A 日 程 B 日 程  市町村 及び 団体名
石 狩 前 期 4/2~4/13 6/18~6/29 全 管 内
後 期 10/9~10/20 1/15~1/26
空 知 前 期 4/2~4/13 6/18~6/29 全 管 内
後 期 10/9~10/20 1/15~1/26
上 川 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 全 管 内
後 期 10/22~11/2 1/28~2/8
後 志 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 全 管 内
渡島・檜山 後 期 10/22~11/2 1/28~2/8
胆 振 前 期 6/4~6/15 8/27~9/7 全 管 内
日 高 後 期 11/26~12/7 2/25~3/7
十 勝 1 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 新得・清水・芽室
後 期 10/22~11/2 1/28~2/8
2 前 期 4/2~4/13 6/18~6/29 豊頃・浦幌・本別・足寄・陸別
後 期 10/9~10/20 1/15~1/26
3 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 鹿追・士幌・上士幌
後 期 10/22~11/2 1/28~2/8
4 前 期 5/7~5/18 7/17~7/28 中札内・更別・大樹・広尾・忠類
後 期 11/5~11/16 2/12~2/23
5 前 期 6/4~6/15 8/27~9/7 帯広・川西・大正・音更・木野・高島
後 期 11/26~12/7 2/25~3/7 池田・幕別・札内
釧 路 1 前 期 5/7~5/18 7/17~7/28 弟子屈・標茶・浜中・厚岸
後 期 11/5~11/16 2/12~2/23
2 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 釧路・阿寒・鶴居・幌呂・白糠・音別
後 期 10/22~11/2 1/28~2/8
根 室 1 前 期 5/7~5/18 7/17~7/28 根室・別海・標津
後 期 11/5~11/16 2/12~2/23
2 前 期 4/2~4/13 6/18~6/29 西春別・中標津・計根別
後 期 10/9~10/20 1/15~1/26
3 前 期 6/4~6/15 8/27~9/7 上春別・中春別・計根別(一部)
後 期 11/26~12/7 2/25~3/7
網 走 1 前 期 6/4~6/15 8/27~9/7 網走・佐呂間・常呂・東藻琴・斜里
後 期 11/26~12/7 2/25~3/7 小清水・清里
2 前 期 4/2~4/13 6/18~6/29 紋別・上渚滑・雄武・興部・滝上
後 期 10/9~10/20 1/15~1/26 西興部
3 前 期 5/7~5/18 7/17~7/28 北見・相内・上常呂・置戸・訓子府
後 期 11/5~11/16 2/12~2/23 端野・美幌・女満別・津別
4 前 期 4/16~4/27 7/2~7/13 丸瀬布・遠軽・上湧別・湧別・芭露
後 期 10/22~11/2 1/28~2/8 生田原・白滝・留辺蘂・温根湯
宗 谷 前 期 6/4~6/15 8/27~9/7 全 管 内
後 期 11/26~12/7 2/25~3/7
留 萌 前 期 5/7~5/18 7/17~7/28 全 管 内
後 期 11/5~11/16 2/12~2/23
基本申込・初回の受検時期 ******* 2回目以降受検可能時期
  前年度後期A日程     今年度前期A日程
    〃 後期B日程     今年度前期A・B日程
  今年度前期A日程     今年度前期B日程・後期A日程
    〃 前期B日程     今年度後期A・B日程
    〃 後期A日程     今年度後期B日程・次年度前期A日程
    〃 後期B日程     次年度前期A・B日程

ひとこと
 昨年、私はおよそ300戸の酪農家を訪問した。審査した牛の数は2,800頭にのぼる。審査や調査のできないほどの病気や怪我などのものもかなりおり、その数を含めると、3,000頭くらいは見たことになるのではないか。
 審査を担当して11年になるが、最近、特に気になることがある。蹄病である。
 全道各地でフリーストール牛舎の採用や牛舎への牛の入替えによる多頭数飼育が多くなり、それが原因かどうかは分からないが、以前より蹄病にかかっている牛や蹄に包帯を巻いた牛の割合が多くなっているようだ。蹄に巻かれた包帯で、蹄の線形チェックが正確にできないこともしばしば…。跛行はもちろん、歩くことさえままならない牛も良く見かける。前肢をクロスして立っている牛もごくまれにいる。
 蹄底潰瘍、蹄球糜爛、趾間腐乱、白帯病、趾皮膚炎(PDD)…高泌乳に耐える乳牛には蹄病だけでも様々なものがあります。
 四肢も含めた肢蹄の異常は、寝起き回数の減少に伴う採食行動の減少、飲水行動の減少はもちろん、さらに栄養不足による第四胃変位にまでなることさえあるという。それによる乳量の減少はもちろん、繁殖成績の悪化などで、蹄病による経済的損失は1頭当り約5万円との推計もあるようで、淘汰される場合もあり、その場合の損失は…?
 また、病気に罹っていないが、その予備軍となる可能性の高い、蹄の形状の悪いものも多くなっているように思う。蹄踵の薄いもの、外蹄・内蹄の大きさが極端に違うもの、蹄全体が小さなもの、外蹄の巻き爪、蹄尖の開いたものなどである。これらを気にしていない人、気づいていない人も意外と多い。
 「予防に優る治療なし」です。
 蹄病の予防に重要なのが適切な削蹄です。削蹄だけで全ての蹄病を防げるわけではないが、蹄の成長速度から4ヵ月毎に、年3回必要と言われている。特に、分娩後に症状が出て、悪化しているケースも良く見かける。乳代の損失を考えれば、削蹄代は安いのでは…?と、単純に考えてしまう。分娩前に削蹄がされていれば…といつも思うものです。
 登録協会では世界的な改良傾向を考慮するとともに、肢蹄の改良を進めるために、近く審査標準の改定を行い、肢蹄の評点、特に「蹄」の重み付けを変更する予定である。この改正によって、近い将来、交配種雄牛から遺伝的にさらに肢蹄の改良ができるといいのだが…
Y・F